nounours booksが会いたい人を訪ねるページです。
家のこと。部屋のこと。
ともに暮らす家族、日々のあれこれや布使い、などなど。
「room story」side A、side Bとしてお届けします。
01-side B
ダンスコが教えてくれた「大切なこと」
荒井昭久さん・博子さん(ダンスコ日本総輸入元)夫婦の暮らす、「軽井沢の別荘」で迎えた翌朝。
淹れたてのコーヒーと、焼き立てのパンにソーセージ。
おいしくて幸せな朝ごはんをいただきながら、お話の続きを伺うことにしました。
「軽井沢の気候は、シアトルによく似ているんですよ」と、昭久さん(以下、あきさん)。
アメリカ・シアトルは、まだふたりが「ダンスコ」を知らない頃に暮らしていた街です。
「ダンスコはもうずっと以前から、日本で普通に売っている靴」と思い込んでいたけれど、
今回のお話を聞いて改めて、
「ふたりのstoryがそのまま、ダンスコのstoryだったんだ」と実感しました。
side Bでは、そんなふたりのこれまでを、軽井沢の別荘の写真とともに、お届けします。
ふたりの最初の出逢いは、遡ること、なんと高校時代。
あきさんが高校3年生、博子さんが1年生。
同じ中高一貫校の男子校と女子校にそれぞれ通っていて、「文化祭の時、声をかけられました(笑)」と、博子さん。
長く続く人生のパートナーと、高校生の時に巡り合えたというミラクル!
それはきっと、神様のプレゼントだったに違いありません。
社会人になり、アパレルメーカーにデザイナーとして就職した博子さんですが、
「アメリカで暮らしてみたい」というあきさんの後を追って、自分も一緒についていくことに。
自分のキャリアを捨ててパートナーについていく、という決心には、なかなか勇気が必要なのでは、と思うのですが、迷いや不安はありませんでしたか?
「たしかに、彼が日本に戻るのを待つ、という選択もありました。
でも、一緒にアメリカに行くほうが何だか楽しそうに思えて。一緒に行くことにしたんです」(博子さん)
閑話休題*
別荘の寝室には、「防犯のため?」と思われる、シンプルでカッコいい斧が。
これには、あきさんがアメリカに惹かれた理由のひとつに「子どもの頃からのホラー映画ファン」という背景があることを知り、編集部一同、納得したのでした。
そして前回のタイトル「ハイジとペーター」についても、
「自分的にはペーターよりも、『死霊のはらわた』の主人公・アッシュがしっくりきます」とのコメントが(笑)。
(*くわしくは前編を!)
さて、アメリカでの暮らしを始めたものの、
「何をして暮らしていくのかは、何も決まっていませんでした(笑)」と、博子さん。
「とりあえず電話帳を見て、日本食レストランに片っ端からかけたらなんとかなるのでは」
実際、その提案どおり、あきさんは「スシシェフ」としてビザを取り、
博子さんは専業主婦をしながら、日本食レストランでアルバイトを始めます。
「そのレストランで、スタッフの人たちがダンスコを履いていたんです。
みんな、なんだか変わった靴を履いてるなぁと思って(笑)。
でも勧められて履いてみたら、滑らないし、立ちっぱなしの仕事でも疲れないし。
わたしもだんだん、ダンスコしか履かなくなっていって」
当時、ふたりが立てていたプランは、働いて貯めたお金で、日本食レストランを始めるか、家を買うか。
ところが、このダンスコとの運命的な出逢いによって、博子さんは思い切った行動に出ることになります。
博子さんは友人と、ダンスコ本社にメールを送ってみることに。
すると、すぐに「本社に来てください」という返信が!
後で知ったのは、じつは米ダンスコには、日本の大手商社のオファーも来ていた、ということ。
にも関わらず、まだ会社もない、靴を売ったこともない人たちと契約を結んだのは、
「ほかのブランドの靴を持っていないこの人たちなら、ダンスコを大切に販売してくれそう」という理由だったよう。
そういえば、ここ軽井沢の別荘を選んだときも、先にピンときたのは博子さん。
そして、その直感を面白がって、頼れる伴走者になってくれたのはあきさん。
高校時代からのコンビネーションが、起きる出来事をより面白く、ワクワクする方へと運んでいったのだなぁ、と腑に落ちました。
でも、すべてがトントン拍子というわけにはいかず、最初の1年は苦労もいろいろ。
検品作業がものすごく大変だったり、100通以上出した展示会のメールに、1通も返事が来なかったり。
「ダンスコ運営のための資金も、どんどん減っていった」という中で、それでも不安にはなることはなかったですか?
「お金もなくなっていって、最初はさすがにドキドキしました。でも気持ちのどこかでは、
ダンスコは本当に素敵ないい靴だから、きっと大丈夫、という確信はあったんだと思います」(博子さん)
たしかに。
一度履くと、持っているのに、ほかのかたちや色も欲しくなってしまうのが、ダンスコという靴の不思議な魅力です。
その確信に支えられ、たとえ面識がないお店でも、勇気を出して飛び込んでいったふたり。
「こちらのお店に置いていただけませんか?と声をかける、その一瞬一瞬、本当にがんばったなと思います」(博子さん)
「どの方も、よくこんな飛び込みの、よくわからないアメリカ帰りの僕たちの話を聞いてくれたなぁ、と思います」と笑うあきさん。
そして「みなさんに助けられてきました」とふたり。
ふたりのミラクルstoryには、
やりたいこと、好きなことを現実に変えていく「大切なヒント」がたくさん詰まっていると感じました。
そしてわたしは足元のダンスコを眺めながらしみじみと、
「ここまできてくれて、ありがとう」と、呟きたくなったのでした。
Column 暮らしの中の布使い
写真は、博子さんが、静岡沼津の雑貨店「hal」の店主・後藤由紀子さんとイベントをご一緒した際に購入したという、イギリスのリネンクロス。
「キッチンの小物は、赤が元気になるので好きです。
食器を拭くためですがす、すぐに乾くし、かけて置いておくだけでも素敵です」(博子さん)
訪ねた方
荒井昭久・荒井博子
2008年より、アメリカ・ペンシルバニア州で生まれたコンフォートシューズ「ダンスコ」の日本総輸入元の運営をスタート。
ブランドディレクターの博子さんは、シンプルで上質なファッションセンスでも人気。
http://www.dansko.jp/index.html
CHECK&STRIPE ONLINE SHOP「11月の新しい布」の左メニュー「ダンスコ」で商品の一部をご紹介しています。是非ご覧ください。
撮影/大段まちこ 文/井尾淳子
special thanks/田中美和子
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