close
CATEGORY

issue


ROOM STORY IN PARIS

 

nounours booksが会いたい人を訪ねるページです。

家のこと。部屋のこと。

ともに暮らす家族、日々のあれこれや布使い、などなど。

私たちは昨年11月にパリにお住まいの遠藤カホリさんを訪ねました。

「room story」side A、side Bとしてお届けします。

 

 

01-side A

「世界はひとつ」の家

 

「パリに住み始めて、もうすぐ25年目を迎えます」とは、料理家・遠藤カホリさん。

有機(BIO)食材で作るメニューが人気のビストロ『Le Petit Keller(ル・プチ・ケレール)』のオーナーシェフです。

(カホリさんは、フランスで「BENTO」の言葉と文化を定着させた立役者でも!)

 

 

 

 

パリの古いアパルトマンの5階。その一室が、カホリさんのお住まいです。

最上階のメゾネットのお部屋に入ると、

風通しがよく、天井も高く。

一歩入ると、そこは開放感のある、とても心地のよい空間が広がっていました。

 

 

 

 

カホリさんいわく、「この家で一番好きなところは、

屋根裏部屋のエッフェルが見える小窓です」とのこと。

小さな窓から見える、小さなエッフェル塔。

きらきらと輝くその光は、パリで働き、暮らす人だけに与えられた

ご褒美のように思え、少しうらやましく感じました。

 

 

 

 

とくに、お気に入りのアイテムは、

リビングの椅子に無造作に置かれたリバティプリントのクッションと、ソファの肘掛クッション。

それは、ブランド「saqui(サキ)」のデザイナー・岸山沙代子さんが縫ってくれたもの。

岸山さんがパリに留学中、カホリさん宅に間借りしていたお礼のプレゼントなのだそう。

二人でともに街に出かけ、一緒に生地選びをしたことも、大切な思い出です、と教えてくれました。

 

 

 

 

 

キッチンはコンパクトながら、料理人らしく、

いろいろな道具が手に届きやすいように工夫されていました。

山椒、カレーパウダー、和辛子……。

たくさんたくさん並んだスパイスの隣には、フラワーエッセンスの瓶もさりげなく。

雑多に置いてあるようでいて、そこにはたしかに“ストーリー”があって、

はたと気づくと、すべてのモノ一つひとつを“ジーッ”と見つめていることに気づきました。

カホリさんの部屋の中には、そんな魅惑ゾーンがそこかしこに、

キラキラと散りばめられています。

 

 

 

 

 

カホリさん宅の印象をひと言でいうならば、「世界はひとつ」。

旅先で見つけた、マトリョーシカやこけしの置物に、

たくさんの本や子どもたちの写真と絵。

たとえばかごの中の果物も、黄色とオレンジの同系色でまとまって、

そばには玉ねぎの紫が、しっかり補色になっている。

そのさりげない色のコントロール術は、きっと長年培われたご自身のセンスと、

パリという街に暮らす日常の賜物。

思わず唸ってしまうほどのカッコよさです。

 

 

 

 

 

「どうすればこんなふうに、楽しくデイスプレイできるのかな?」

そんな疑問に、「どこにでもあるものではなく、他にはないものを集めています」と、カホリさん。

貝殻やサンゴ、魚の置物。「海がテーマ?」と思ったコーナーは、

よくよく見ると、ウサギも鳥も。

カホリさんの言葉どおり、「他にはないもの」たちはみんな、個性を放ちながらもひとつになって、

みんな仲良く、手をつないでいるかのようでした。

 

 

「この家に来ることは、前から決まっていたのね」と感じたほど、

集められた世界のいろいろなモノたちは、カホリさんの魔法にかかって、

どれもみんな、とっても居心地がよさそう。

人も食べ物もインテリアも。

それは、個性をあるがままに引き出して、仲良く調和させるという、

カホリさんのボーダレスな生き方・暮らし方、そのものなのかもしれません。

はじけるような笑顔が、そのことを証明しているように思えました。

 

              side b へ続く

 

 

訪ねた方

遠藤カホリさん

軽井沢生まれ。1995年よりパリ在住。

「ローズベーカリー」「ナナシ」のシェフを経て、2016年にオーナーシェフとしてレストラン「ル・プチ・ケレール」をパリ11区にオープン。

フランス語の著書に『Une Japonaise à Paris』『Japon, Cuisine intime et gourmande』『Les Bento de Nanashi』、日本語の著書には『NanashiのBENTO』(アノニマ・スタジオ)がある。

 

撮影/大段まちこ 文/ヌーヌーブックス編集部、井尾淳子

 

 

 

ROOM STORY

 

 

 

archive

もっと読む