close
CATEGORY

issue


ROOM STORY

 

nounours booksが会いたい人を訪ねるページです。

家のこと。部屋のこと。

ともに暮らす家族、日々のあれこれや布使い、などなど。

「room story」side A、side Bとしてお届けします。

 

 

01-side B

五感でわかる「暮らしやすさ」

建築家・堀部安嗣さんの思想に惹かれ、新居の家づくりを託したのは、

静岡の雑貨店「s a h a n j i +(サハンジプラス)」店主・河村奈穂さん。

今回、写真は河村さんのお気に入りの場所を中心に、

家が出来上がるまでのroom storyをお送りします。

 

 

 

「わが家で一番特徴的なのは、2階にある円柱型の空間です」と、河村さん。

通路でもあり、ホールでもあり、部屋でもあるような、意匠と機能、両方を兼ね備えた場所です。

「ちょっと不思議な気持ち、静かな気持ちになる空間です。

本を読んだり、ぼーっとしたり、ストレッチをしたり。

家族もそれぞれ、思い思いに過ごしています。

わが家らしい、わが家だけにある、

唯一無二の空間という充足感がありますね」

漆喰の壁と自然光が織りなす、円形の不思議な空間。

たしかに、いるだけですうっと心が落ち着くのを感じました。

 

 

もうひとつ特徴的なのは、1階のキッチンとリビング。

キッチンを中心に、回遊性のあるとても効率的なひとつなぎの空間になっていて、

あえて空間を細かく分けない設計になっているのだそうです。

「同じ空間にいる家族がそれぞれ別のことをしていても、気になりません。

たとえば息子がブロックで遊んでいて、私は料理をしていて、

夫はテレビを見ていて。それぞれの気配は感じつつ、それぞれが集中できるんです」(河村さん)

 

 

 

「気配を感じつつも、集中できる」空間の秘密。

それは、ひとつなぎの部屋の、

そこここにある「短い壁」にありました。

構造上の壁ではなく、あえて作った「なくてもいい壁」

それがあることによって、空間になんとなくの仕切りが出来る、

そんな工夫がなされています。

 

 

堀部さんの設計は、まるで心理カウンセラーの処方箋のよう。

機能的にも心理的にも日常の「小さなストレス」がないよう、

配慮されているのが印象的でした。

 

 

 

設計前、最初の顔合わせの帰り際、

堀部さんはミニカーを差し出しながら、

「これ、“ゴルフワン”といって、大好きな名車なんですよ」と、嬉しそうに教えてくれたのだとか。


さらに、「大衆車ですが、デザイン的にも機能的にも、

とてもバランスに優れているんです。

私は、この車のような家を作りたいと思っています」とも。


「車に疎い私はすぐにはピンと来なかったのですが、
後にその言葉の意味を、体感をもってわが家で感じることとなりました」(河村さん)

 

 

堀部さんの言葉を借りると、ゴルフワンは、

「これ以上足すことも、引くこともできない。

そして美しく気品がある中にも親しみやすさがあり、

機能的、合理的でありながら、個性がある」

2階の円形の空間や回遊性のあるリビング・キッチン、また杉板の外観が醸す雰囲気など、河村邸はまさに、ゴルフワンのエッセンスがしっかりと反映されているようでした。

 

 

家づくりが始まってから、

「間取りはこう」「建材はどれを」といった、

細かい打ち合わせがあったのかと思いきや…。

河村さんのお話を聞いてびっくり!

「いえ、そこからは堀部さんに完全におまかせでした。

間取りや建材についてはもちろん、

平屋になるのか2階建てになるのかも、

基本設計ができあがるまで分かりませんでした」(河村さん)

 

 

一生の住まいをすべておまかせ、というのはなかなかないこと。

河村さんの潔さも、すごいです!

「堀部さんが建てるのだから、

ベストなわが家のかたちになるに違いないという、

全幅の信頼でおまかせすることができました。

意匠も機能面も両方、本当に申し分なくて、

“もっとここをこうしておけばよかった”という後悔も、まったく見当たらないんです。情緒と性能を併せ持つ快適な住まいを作っていただきました」

 

 

住心地のいい家。それはあたまで考えるのではなく、

体がそう、とわかるもの。

「住まいの“快の条件”は、そう多岐にわたるものではない」というのが堀部さんの考え方。

なるほど。その言葉を聞いて、

すべておまかせで出来上がった河村邸の理由が、

最後にもう一度、腑に落ちたのでした。

 

Column 暮らしの中の布使い

 

「CHECK&STRIPE」の布で作った、布作家LULUさんのキッチンタオル。

LULUさんとは、同じ静岡県在住のご縁から、公私共におつきあいが深いそう。

今年夏、サハンジプラスではLULUさんの展示会も予定中。

 

 

訪ねた方

河村奈穂

静岡県清水にある「サハンジプラス」店主。

幼稚園教諭を経て、2006年に祖母の家を改装、雑貨、服、手作りのものを扱う店としてスタート。現在は企画展期間のみオープン。

また、今後は新居の一角で、「サハンジプラス」サテライトショップも展開する予定。

 

℡ 054-353-1155

静岡市清水区堂林2-9-5

https://www.instagram.com/sahanjiplus

 

撮影/大段まちこ 文/井尾淳子

 

 

 

ROOM STORY

 

 

 

archive

もっと読む