nounours booksが会いたい人を訪ねるページです。
家のこと。部屋のこと。
ともに暮らす家族、日々のあれこれや布使い、などなど。
「room story」side A、side Bとしてお届けします。
08-side A
住まいは〝Lagom (ラーゴム)〟がいちばん
07では、CHECK&STRIPEの軽井沢保養所「nella(ネルラ)」を訪れた私たち編集部。
同じ軽井沢で、次の取材バトンを快く受け取って下さったのは、
須長檀(すなが・だん)さんと、理世(みちよ)さんご夫妻です。
檀さんは、北欧を中心とした家具のデザイナー。
理世さんは、テキスタイルデザイナーであり、軽井沢ハルニレテラスにある北欧家具と雑貨店「NATUR Terrace(ナチュール テラス)」のオーナー。
「NATUR Terrace(ナチュール テラス)」は、毎夏、CHECK&STRIPEのイベントが行われるお店。
スウェーデンで買い付けているというヴィンテージ家具や生活用品などが並びます。
そして、須長さん夫妻が暮らす一軒家は、自然豊かな森の中に。
よく晴れた冬の陽光を浴びて、幸せそうな佇まいのエントランスが、私たちを出迎えてくれました。
今回のタイトルにある「ラーゴム」という言葉は、夫・檀さんから教わったスウェーデン語で、
「ほどほど」という意味なのだそうです。
そして〝Lagom är bäst (ラーゴム エ ベスト)〟は、「ほどほどが、いちばん」ということ。
「多過ぎず、少な過ぎず、自分のほどほどの加減で生きていきましょう、ということですね。
インテリアにしても生き方にしても、スウェーデンの人たちは、この〝ラーゴム〟の精神を大切にしています。自分の軸や価値観をしっかり持っているからこそ、いい意味で〝肩の力を抜いていいんだよ〟と言える文化なのでしょうね」(檀さん)
今、世界的な情勢がある中で、「ほどほどの暮らし」という言葉は、とても心に響くものでした。お二人がここ軽井沢で、ラーゴムな住まいをもつに至るまでの物語をお届けします。
人は、「そうなるように」なっているのだなぁ、と思うことがあります。
祖父・父ともに家具を生業としていた檀さんは、スウェーデンに生まれ、幼少期を過ごした後に日本へ。
そして家具デザインを学ぶため、大学卒業後にスウェーデン・ヨーテボリ市HDK大学の家具デザイン科へ入学。
一方の理世さんは東京で生まれ育ち、山形の大学で日本画を学ぶ途中、檀さんと同じ、ヨーテボリ市HDK大学のテキスタイルアート学科へと、交換留学生として通うことになります。
「同じ大学で、日本人は私たち二人しかいなかったんです(笑)」と、理世さん。
偶然の出会いからおつきあいが始まり、
檀さんはヨーテボリに「SUNAGA DESIGN STUDIO(スナガ デザイン スタジオ)」を設立。
10年間のスウェーデン暮らしを経て、日本へと帰国するタイミングで二人は結婚しました。
東京生まれ・東京育ちだった理世さん。でも、スウェーデンという国とのご縁は、留学以外にもあったことがわかりました。
「両親は第一次北欧ブームと呼ばれる世代でした。当時、スウェーデンという国の認知はあまり広くはなかったようですが、幼い頃から家の中にはアラビアの器があったり、アルヴァ・アアルトの家具があったり。
母がそういうものが好きだったこともあり、自分にとってスウェーデンは、そこまで遠からずの国でした」(理世さん)
お互い両親の影響もあり、スウェーデンに惹かれ、次は軽井沢へ。
きっかけは、軽井沢ハルニレテラスの立ち上げで、檀さんの活躍(自身が手がけたコーヒーテーブル「ITOMAKI」「NEWTON」が北欧家具のフェアで最優秀賞を受賞)から、出店のお誘いがあったのだそうです。
二人とも、軽井沢は一度も訪れたことはなく、まったく縁がなかった場所です」とのこと。
「でも、僕らが暮らしていたスウェーデンのヨーテボリという街はとても田舎で、路面電車に乗ると、一方は海行き、もう一方は森行きと、とても自然豊かなところでした。誰もいない海、森がすぐ近くにあって、街中にも鹿やハリネズミが出てくるような(笑)。二人とも東京育ちですが、スウェーデンの暮らしが心地よくて、日本に戻るなら、自然が多いところに暮らしたいねと話していたところでした」(檀さん)
「もともと、お店をやっていこうというアイディアがあったので、北欧のものを理解してくれる人が集まるような、田舎ではあっても文化があるような、そんな街を探していました」(理世さん)
そんな二人にとって軽井沢は、まさに理想どおりの街でした。
帰国後、すぐにお店をオープンさせたため、スウェーデンから軽井沢に引っ越してきた当日、まずは賃貸のアパートを決めたという二人。そこから7年近くは軽井沢の市街地にあるアパートに暮らしていたけれど、二人の子どもをもうけたことから、本格的な土地探しに。(上の写真は、長男の絃くん・6歳と長女の杏ちゃん・4歳)
「最初は古いところを買って改装しよう、なんて考えていたのですが、なかなか見つからなくて。知人の紹介で、運良くこの場所を見つけたのが一昨年のことでした」(檀さん)
「土地探しはいろいろ大変だなぁ、と疲れ切っていた時でした(苦笑)」(理世さん)「最初は、蔦の絡まっている鬱蒼とした森の状態のままで、見に来たんです」(檀さん)
素敵なお家であることは、写真からも伝わってくるかと思うのですが... ...。一体どんなプロセスを経て、森が「ラーゴム」な家へと生まれ変わったのでしょうか?
北欧家具との付き合い方、選び方も含めて、気になる物語は、後編side Bをお楽しみに!
Column 暮らしの中の布使い
キッチンの壁には、モミの木で編まれたバスタビンネ(スウェーデンのカゴバッグ)が。
「キッチンクロス類は、簡単に畳んで、ここにえいっと放り込みます。家事をするのも片付けるのも、〝ほどほど〟の手抜きが大事です。台所周りのお掃除には、スウェーデンのリネンや古いコットンの布を使っています」(理世さん)
訪ねた方
須長 檀・理世 夫妻ともにスウェーデン・ヨーテボリ市HDK大学に通い、家具デザインやテキスタイルアートを学ぶ。
現地でデザイナーとして「SUNAGA DESIGN STUDIO(スナガ デザイン スタジオ)」を設立後、2009年に帰国し、
「NATUR Terrace(ナチュール テラス)」をオープン。https://sunagadesign.com
撮影/大段まちこ 文/井尾淳子