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Sewing Diary in Paris making story

CHECK&STRIPE パリのソーイングダイアリ―

 

2023年3月3日に、CHECK&STRIPEの17冊目となる本が世界文化社より発売されました。

新刊の発売を記念して、撮影秘話など、貴重なmaking storyをお届けいたします。

VOL.2は、スタイリング担当の黒澤充さんをお迎えし、CHECK&STRIP代表labmiさんとともに、クリエイティブの裏側やコーディネートのヒントについて、楽しいお話を伺いました。

 

 

表紙になった「エッフェル塔」の写真と服のこと

 

 

 

 

ーパリで本書の撮影が行われたのは、昨年の7月頃だったそうですね。

labmi そうなんです。昨年、パリの夏は異常気象だったようで、猛暑のなか本当におつかれさまでした。撮影ではカメラマンの高橋ヨーコさん、そして黒澤さんに、とてもお世話になりました。

黒澤 こちらこそ、ありがとうございました。僕は冬のシーズンの暗いパリしか知らなかったんですが、今回のお仕事のおかげで、ハイシーズンのパリの光とか、その良さを知ることができました。(発売前の色校を眺めながら)わぁ~、いま見ると、懐かしいですね!

labmi この、エッフェル塔の前で撮影した写真が表紙になりました。この服のスタイリングは、最初から表紙候補だったのでしょうか?

黒澤 はじめは表紙を意識していたわけではなかったんですけども…。この写真、じつはパリでいちばん最初に撮ったカットなんですよ。この「いちばん最初に撮るカット」というのが、いちばん重要だな、という思いはありました。なぜかというと、CHECK&STRIPEの『Sewing Diary in Paris』という本をつくるときの、最初のテンション…空気感が、そこで決まると思ったので。

labmi スタイリストさんとしては、そこで全体が決まる、ということなんですね。

ー今回の本は「お裁縫好きな女の子がお気に入りの手作りの服を着て、パリで長期の滞在をしている」という設定ですよね。

黒澤 はい。そういうストーリーとしてのテンションをつくっているのが、このエッフェル塔が背景にある写真だったと思います。スタイリングって、じつは「順番が要」だったりするんですね。まずは「パリだ!」という、アイコン的な場所に撮影する服を当てはめてみて、それが正解だったので、そこから先はどこでどの服を撮るか、あまり迷うことなく決まりました。なので、やっぱりこの(表紙の)写真が、いちばん好きですね。

 

 

(写真)スタイリストの黒澤充さん。雑誌や広告をはじめとする様々な媒体で活躍中です。

 

 

labmi 「スタイリングは順番が大事」というのは、とっても興味深い視点でした。

黒澤 もうちょっと突っ込んだ話もしますと、その順番を決めるときには、「空間の色」を見ています。なんていうのか…「空間に対しての色」に当てはめるようにして、僕の場合はスタイリングをしているんですね。なぜかというと、labmiさんも僕も、「人」ではありますけど、分解していくと、最終的には全部「色」なんですよね。髪の色、肌の色、そして、着ている服の色。なので、それらの色を見ると同時に、空間にある色を見ていくという。

labmi なるほど~。「エッフェル塔での服はこれ」ではなくて、そういう色の方程式から、「この場所の色に合う服はこれ」という選び方なんですね。だから写真になったときに、それが一つの景色として、服がしっくり馴染んでいるんだなぁと改めて思いました。

黒澤 ちょっとマニアックな話なんですけど(笑)。なので空間の色を見ることで、自分の中ではなんとなく、撮る服をどれにするのかがおのずと決まってくるんですよね。 

ーそういえばlabmiさんも、前回のお話で、この本の服は「色からくるインスピレーションを大切にした」とおっしゃっていましたよね。お二人とも、はからずも同じ見方をされていたところが面白いです!(*01のお話もぜひお読みください!)

 

 

写真は口絵のページ。「“セーヌ川のワンピース”という服は、流れる河の色とか光の加減など、空間の中に似ている色があるな、と思ったことからこの場所で撮ろう、となりました」(黒澤さん)

 

 

「赤」という色の使い方

 

labmi わたしは今回のスタイリングを拝見して、「赤」がとっても効いているな、と思ったんです。赤いソックスとか、肩にかけた赤いセーターとか。小物以外でも、部屋の空間の中にぽつんと赤があったりして。…この赤をポイントにされているのは、黒澤さん的には、パリらしい色が「赤」だからですか?

黒澤 (高橋)ヨーコさんが、空間に入った赤をどう見ておられたのかはわからないんですけど…。僕は、「ソックスなどの小物を全部白にしちゃうのは、ちょっとつまらないかな?」と思ったんです。それに赤って、女性らしい色、かわいらしい色ですよね。そういえばヨーコさんからも撮影時に、「赤いソックスを買いたいから、どこのものか教えて」と言われたのを思い出しました(笑)。

labmi たしかに、ナチュラルな服のコーディネートのとき、赤の小物を合わせる、というのはかわいいですよね。うちのスタッフにとっても、この「赤」づかいは参考になるコーディネートだなぁと思いました。

 

 

 

写真は、赤いソックスをあわせた「開衿タックワンピース」のコーディネート

 

 

おしゃれのバランス

 

labmi 黒澤さんにスタイリングをお願いするのは、昨年出版した『CHECK&STRIPE my favorite 私の好きな服』(主婦と生活社)に続いて、今回で2度めですね。黒澤さんからご覧になって、CHECK&STRIPE の服は、どんなイメージがありますか?

黒澤 CHECKさんの服は、「シンプル」というイメージの方が多いと思うんですけど。僕は「ポップな服」かなと思います。今回の本に出てくる服は、シックなものももちろんありますが、先程の「セーヌ川のワンピース」に使われている生地のチェック柄やその色合いを見たときに、ポップだなぁと感じたんです。なので前回の本のときよりも、ポップさは意識しましたね。先程の赤いソックスとかも、その延長線にある感じです。

labmi モデルの「かこちゃん」こと、高橋佳子さんはとっても知的で落ち着いたムードの方なんですけども、そういう雰囲気の彼女がポップなコーディネートをするというバランスがまた、服を際立たせてくれているのかもしれませんね。

 

 

labmiさん(写真左)と黒澤さん。かわいいものについて、そしてパリについて、おしゃれ談義は尽きません。

 

 

ーバランスの取り方というのは、とってもおしゃれの勉強になりますね~。

黒澤 CHECKさんの服は、エレガントでシックなものもあるし、ポップなものもあって…。だからモデルさんは、「シックとポップの間に立つ人」がいいなと思いました。シックとポップ、どちらにも偏りすぎず、ニュートラル。「ピンを置く立ち位置があいまい」だからこそ、面白くなるんじゃないかな、と。

labmi わかります(深くうなづく)。

黒澤 そういう意味でも、モデルのかこちゃんは、ぴったりでしたね。ガーリーすぎる雰囲気の方だと、ちょっと「そのまんま」すぎるというか…。品のあるシックな雰囲気の人が、赤いソックスやバレエシューズを履いているからこそのかわいらしさ、みたいな。

labmi なるほど~。黒澤さんはやっぱり、十代くらいの頃から、おしゃれがお好きだったんですか?

黒澤 僕は中学のときにスケボーやスノーボードにハマっていて、そういうストリートカルチャーのファッションは好きだったんですけども。…じつは「チェック」柄というのを、高校時代まで知らなかったんです。高校の時、雑誌の「オリーブ」に載っているチェックの柄に衝撃を受けて、同じクラスにいたセンスのいいおしゃれ女子の子に、「これってなんていう服なの?」と聞いたくらい(笑)。

labmi それは意外(笑)。かわいらしい「チェック」のエピソードですね。

 

 

 

labmi 今日のお話を伺って、景色の中に、今回の服を着たモデルさんが溶け込んでいる写真、その絵づくりのひみつがよくわかりました。黒澤さんは、服やモデルさんをきれいに見せてくださるスタイリングをされる方なんだな、ということも含めて、ですが。

黒澤 ありがとうございます。その人の輪郭が立ち上がってくるような、そんなコーディネートがしたいなといつも思っています。

ー「読者のみなさんも、この本の世界の中に、ご自身のイメージする色や服を当てはめてみてください。そして、自由な気持ちでソーイングを楽しんでください」とlabmiさん。色選びやコーディネートについても、ぜひこの本を参考に、ものづくりを楽しんでくださいね。

撮影/大段まちこ 取材・文/井尾淳子

 

 

 

Sewing Diary in Paris making story

 

 

 

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