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Sewing Diary in Paris making story

CHECK&STRIPE パリのソーイングダイアリ―

 

2023年3月3日、CHECK&STRIPEの17冊目となる本が世界文化社より発売されます。

新刊の発売を記念して、撮影秘話など、貴重なmaking storyをお届けいたします。

VOL.1は、CHECK&STRIP代表、labmiさんの「Sewing Diary in Paris」に詰まった想い。必読です!

 

ストーリーは「お裁縫好きの女の子のパリ留学」

 

 

 

ー今回の本のコンセプトについて、まず教えていただけますか?

labmi はい。旅に出られない日々が続いていたので、「日常から離れた場所で、深呼吸をしてみませんか?」という、そんなメッセージを伝えたくて、この本を作り始めました。

コンセプトは、「とあるお裁縫好きな女の子がお気に入りの手作りの服を着て、パリのアパルトマンにちょっと長めの滞在をして過ごしている」というものです。表紙をめくった時から、読者の方がその女の子の目線になって、パリの日々を過ごしていただけたらな……と。

 

 

 

ーテーマからして、すでにかわいいですね~。でもなぜパリだったのですか?

labmi 「お裁縫好きの女の子」という設定には、じつはモデルがいるんです。出版社に勤めていた友人なのですが、仕事を辞めてパリで数年パターンを学んで、今は自分でブランドを立ち上げて活躍しています。彼女がパリにいる時、何度か私もパリで会ったのですが、なんとなく、彼女のそんなイメージがあったんですよね。お裁縫好きの女の子のパリでの時間は、「夢が叶う前兆」のような、そんな気がして。

ー「夢が叶う前兆」! 素敵なエピソードですね。その「お裁縫好きの女の子がパリで着ている」として、今回はどんな服を紹介しようと思われたのですか?

labmi まず、「色からくるインスピレーション」を大切にしました。「パリの色合いはこういう感じ」というイメージがあったんです。たとえばピンクひとつとっても、はっきりとした色合いというよりはモーヴな感じ。グレイッシュピンクのような、微妙で柔らかい、シックな色合いの生地を使いたいな、と。今回の撮影でもご協力いただいた、パリの老舗メルスリー(手芸屋さん)「ultramod」に初めて行った時にも、そんな色のリボンがたくさん並んでいました。ローズ、ピンク、グレー、ラベンダー…というようなグラデーションが、「パリの色」として心に残っているのかな?と思います。

ーたとえば「ふんわり袖のブラウス」(写真下)も、ビビッドなレモンイエローというよりは、ちょっとくすんだような、柔らかな色合いですよね。ほかの服にもそういう色の生地がたくさん使われていて、たしかに、「パリ」な感じです!

 

 

「“ふんわり袖のブラウス”という、イエローの服には、シルクが入ったしなやかな生地を使いました」(labmiさん)

 

 

「フランソワーズ」「マドレーヌ」…パリの名前に憧れて

ー 同じヨーロッパでも、ロンドンとパリとではまた、醸し出す空気感が違いますよね。

labmi ええ。例えば活字にしても、イギリスならブロック体ですし、フランスは筆記体…とか。わたしが勝手にイメージしてるだけかもしれないのですが。

ー たしかに、表紙のタイトルのロゴも筆記体! 

labmi そうなんです。ストライプ柄も、3センチ幅くらいの大きなものはイギリスという感じがしますし、パリなら、遠目に見ると無地に見えるような、細くて繊細なもの…という感じで生地を選びました。そういうちょっとしたことで、パリらしい雰囲気を醸し出したいなと思いました。

 

 

 

labmi パリのイメージについて、もう少しお話をしてもいいでしょうか。

ー ぜひ! もちろんです!

labmi 幼い頃に読んだ本に、「フランソワーズ」という名前が出てきたんですよね。「このかわいい名前、一体なに?」と感動したんです。子ども心にも、名前の持つエレガントさに強く惹かれてしまったというか。学生時代には荒井由実時代のユーミンの曲でも、「私のフランソワーズ」という、フランスの香り漂う曲が出たりして。

ーあぁ、わかりますー! わたしもかつて、雑誌の「オリーブ」を見て、「リセエンヌ」という言葉に強烈に憧れました。日本語にはない、言葉の響きですよね。アメリカの「キャサリン」とはまた違う香りが(笑)。

labmi そうそう。じつはわたしは学生時代、仏文科だったのですけど、「マドレーヌと紅茶」が出てくる小説や、教科書のグレーや淡いラベンダーの色やデザイン…そのイメージが自分の中にずっとあるのかもしれません。教科書に出てきた「ジュヌビエーブさん」とか、「ピエール」とか「アラン」など、フランス語の固有名詞に憧れを持っていました。厳しいシスターの授業の内容は全く理解できなかったのですが…。シスターの話すフランス語が美しくて、つい授業中もウトウトと夢の中に(笑)。

ー思いがけないところから、labmiさんのパリの原点を伺うことができました。ご記憶の中に、フランスやパリにつながるかわいらしいキーワードがたくさんあったのですね。改めて伺うと、本の愉しみ方がまた広がりますね。

 

デザインは「清潔」「きちんと感」をテーマに。

 

 

 

写真は、「ドルマンスリーブのワンピース」

 

 

ー生地の色や柄のほか、洋服のデザインについては、どのようなコンセプトだったのでしょう?

labmi これまでの本にも共通しているのは、「作りやすくてシンプルで、お客さまの体型を美しく見せる服」です。それはずっと変わらないのですが、今回はバカンスで着る服とは違って、「清潔感」「きちんと感」を意識しました。着やすいけれども、パリの劇場にも行けるような…そんなイメージのデザインです。

ーたしかに、「フランソワーズ」な感じですね。オペラ座に行ってもよさそうな…。

labmi はい。たとえば「ドルマンスリーブのワンピース」は、腕を広げるとビッグシルエットながら、着ると肩からラインが落ちて、どんな体型の方もすっきりと見えるのです。衿元はきちんとしつつも、ゆとりあるシルエットが身体を包んでくれて、生地の良さも表現しているので、印象に残っている一枚です。

 

 

 

ー「ふんわり袖のブラウス」(写真上)も、清潔感のあるデザインですよね。

labmi そうなんです。ビッグシルエットのラインが流行っている中、そういう時代も意識しつつも、「ふんわり袖のブラウス」」のように、きちんと見えて柔らかな印象のブラウスを提案したいと思いました。トップスをきちんと見せると、ボトムスにはボリュームがあるものを持ってきてもバランスがいいですよね。

ーかわいいですよね! そして「開衿タックワンピース」も、クラシカルでかわいいですー。

labmi これも、わたしの記憶の引き出しにあったものになります。「小さな恋のメロディ」という古い映画に出てくる、主人公の女の子、メロディが着ていたギンガムチェックの制服のイメージなんですよ。

 

写真は、「開衿タックワンピース」

 

ーまるでlabmiさんと一緒に、少女時代の憧れ、記憶の引き出しを開けていくような一冊だなぁと感じるお話でした。読者のみなさんもぜひ、「フランソワーズ」な世界観を味わってください!

次回は、本書のスタイリングを担当した黒澤充さんをお迎えし、labmiさんとお二人で語るmaking storyをお届けします。お楽しみに!

撮影/大段まちこ 取材・文/井尾淳子

 

 

 

Sewing Diary in Paris making story

 

 

 

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