nounours booksが会いたい人を訪ねるページです。
家のこと。部屋のこと。
ともに暮らす家族、日々のあれこれや布使い、などなど。
「room story」side A、side Bとしてお届けします。
16 side a
住み心地と、着心地と。
窓の外に気持ちよく広がっているのは、海、空、神戸の街並み。
時間を忘れてしまうような眺望に恵まれたこの家は、CHECK&STRIPE代表・labmiさんが暮らす、神戸の自宅です。
軽井沢にあるCHECK&STRIPEの保養所「nella(ネルラ)」(room storyシリーズ07で紹介)の設計を手がけたのは、建築家の中村好文さん。…なのですが、中村さんは「nella(ネルラ)」より以前にlabmiさんと出会い、この家の設計を担当されていたのでした。
今回side Aでは、labmiさんと中村好文さん、おふたりのものづくりに共通した、まなざしについて、お届けしたいと思います。
写真は、labmi さんが中村好文さんを知るきっかけとなった、中村さんの著書『普通の住宅、普通の別荘』(TOTO出版)。labmiさんの自室に、大切に飾られてありました。
話は少し前に遡るのですが」と、labmi さん。
「中村好文さんの本を初めて読んだ時、家づくりについての考えに、とても共感したのです。それは、わたしの布に対しての想いにも似ていて。自分ではどう表現すればいいのかわからなかった言葉が、そこに書かれてありました。自分自身の仕事に置き換えて、腑に落ちた、というのでしょうか」
共感したのは暮らす人の “住み心地”を第一に考えるという、 中村さんの建築に対する姿勢でした。
「中村さんのつくる家は、一見シンプルで、派手さ、きらびやかな豪華さはないけれども、住んでこそわかる心地よさがあちこちに工夫されています。家が完成して、暮らし始めてみると、“あぁ、こういうところにも、住心地のよさを目配りしてくださったんだなぁ”と、 うれしい発見が次々に見つかりました」
そのひとつはリビングの窓。外の風景が額縁の中の絵のように見えるよう、“ピクチャーウインドウ”と呼ばれるしつらえに設計されていました。
「全面を窓にせず、あえて景色が切り取られている理由も、住み始めてわかりました。夜、寝る時にリビングの灯りを消すと、夜景が浮かび上って絵のように見えるのです」(labmiさん)
寝室の設計にも、住まう人への思いやりがありました。それは、窓から見える景色。ちょうど目の前に、桜の木が見えるように設計されていたのだそう。
「満開の時期はもちろん、若葉のころ、紅葉、冬景色……と、四季の移り変わりを感じることができます」(labmi さん)
階段の手すりには、触れた時にひんやりと冷たくならないよう、レザーが巻かれてありました。
「高野槙」というくるみの木の浴槽が使われた清潔感のある浴室。やさしい肌触りで、すぐに乾いて、意外にお掃除もしやすい」とのこと。
家の中は、さまざまな隙間から光が入るように工夫されています。写真上は、リビングと廊下をつなぐドア。「磨りガラスにはせず、中に麻などの糸のものを入れるのが、中村さんの建築の特徴です」(labmi さん)
何気ないように見えて、圧迫感がなく、住まう人にいつのまにか馴染んでしまう家。
中村さんは、“そういうふうにつくったんだよ”とは、 まったくおっしゃらず、暮らし始めて「そういう仕掛けがあったのか!」と、気づくことが多いのだそう。
中村さんにとっては、「家と、暮らす人」、それはlabmi さんにとって「布と、着る人」との関係でした。
住み心地のいい家のように、シンプルでいながらも着る人を心地よくする布を提案していきたい。
そんな思いからlabmiさんは神戸の家に宿泊するゲストのためにも、
CHECK&STRIPE の布で仕立てた部屋着やパジャマを用意しています。
(わたしも、着用させていただきました!)
labmiさんに、中村さんとの出会いについて聞いてみました。
「家族旅行で鹿児島に行った時に、新幹線の中で中村さんの本を読みながら過ごし、旅館に向かったのです。宿に到着すると、なんと、そこに中村さんご本人がいらっしゃっるではないですか! ロビーで打ち合わせをされていたのですが、わたしの、あまりの驚きの表情に気づかれて、“この方、どうしたんだろう?”という様子でした。
チェックアウトの時に宿の方にその話をすると わざわざ中村さんを呼んでくださって、緊張しつつも、直接ご挨拶したのが始まりです」(labmi さん)
いつのまにかくつろいでしまう岡本の家でお話を伺ううち、labmi さんが中村さんの建築と出会ったことは、もはや必然のように思えてきました。
16-side Bでは、キッチンや愛犬の写真など、labmiさんの日常の暮らしについてお届けします。お楽しみに!
Column 暮らしの中の布使い
「ゲストルームのベッドには、宿泊する方に楽しんでいただけるよう、リバティプリントのパッチワークのブランケットをかけています」(labmiさん)わたしも取材でこの部屋に宿泊させていただいたのですが、たしかに、このブランケットが目に入るたびにこころ和みました!
*「リバティプリントのパッチワークのブランケット」は、『CHECK&STRIPE SEW HAPPY 作りたくなるハッピーなソーイングブック』(世界文化社)に作り方が掲載されています。
訪ねた方
labmi(在田佳代子)
CHECK&STRIPE主宰。兵庫県生まれ。1992年より布の販売を開始。1999年にonline shopを立ち上げ、2006年に神戸にCHECK&STRIPEの直営店、その後自由が丘、芦屋、吉祥寺、鎌倉、福岡に店を構える。シンプルで上質な布を日本で作ることにこだわり、布のある暮らしの提案を続けている。
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撮影/大段まちこ 文/井尾淳子