nounours booksが会いたい人を訪ねるページです。
家のこと。部屋のこと。
ともに暮らす家族、日々のあれこれや布使い、などなど。
「room story」side A、side Bとしてお届けします。
15-side A
プロダクトが生まれる家
CHECK&STRIPEの本拠地、神戸から鳴門海峡を渡り、向かった先は……徳島県!
この日のnounours books編集部の目的地は、イラストレーター・福田利之さんのご自宅でした。
二人めのお子さんができた4年ほど前、妻・恵里さんのご実家のある徳島に、新居を構えた福田さん。現在は、徳島と東京と、二拠点のアトリエで活動中です。
「遠路はるばる、ようこそいらっしゃいました」と、にこにこの笑顔でお出迎えしてくださった、福田さんご一家。
写真左から、次女の月ちゃん(4歳)、福田さん、長女の冬ちゃん(7歳)、恵里さん。
「天井が高く、抜け感が気持ちいい!」というのが、ご自宅におじゃました時の第一印象。
福田さんいわく、「家の設計については、平屋で、木の素材を多く使いたい、というオーダーを伝えました。最初平屋で考えていたのですが、家族のスペースをしっかりとりたかったので、半分だけ2階を作って、仕事場と将来の子ども部屋にしています」とのこと。
広々として、スッキリとしていながらも殺風景に見えないのは、木のぬくもりを感じることに加えて、どこにいても、家族の誰かの空気、気配が感じられる間取りのせいかもしれません。
「子どもができたタイミングで、ということもあったので、大人にとってのおしゃれさよりも、子どもにとって住みやすい家にしたいと思いました。親の目が行き届きすぎるのは、子どもにとっては、ちょっとイヤな時もあるかもしれないですけど……。できるだけ、どこからでも家族の姿が見れるように、また自分の仕事場にも、子どもたちがどんどん入ってこれるように、そんな感じの間取りにしたいなという思いがありました」(福田さん)。
リビングから続く階段(写真)を上がった2階には、オープンなスペースが。そして隣り合わせるように、福田さんのアトリエがあります。
将来、子ども部屋になる予定の2階のオープンスペースは、ミシンと小さな机のみ。福田さんは制作を、恵里さんはミシンを、子どもたちは絵を描いたり、工作をしたり。家族の誰かが、何かをしている空気を感じながらも、それぞれが「自分のこと」「好きなこと」に没頭できる、そんな静かな時間が流れていました。
「子どもたちが成長して、個室を必要とするまでは、今の間取りで過ごしたいですね」(福田さん)
そしてこちら(写真)が、福田さんのイラストの世界が生まれるアトリエです。「アトリエのスペースには、どんなこだわりがあったのでしょうか?」と尋ねてみました。
「うーん、そうですねぇ。照明については、間接照明ではなくて見えやすい光にしてほしい、床が汚れるので、拭きやすくしてほしい…とか、いたって現実的なことばかりですね(笑)。予算も限られているし、こだわりはどちらかというと、アトリエよりも家族が過ごすスペースのほうを優先したように思います」(福田さん)
東京での仕事のほか、大阪では短大の講師など、福田さんの活動の場はさまざま。徳島のこの家にいる一日は、どんな過ごし方をされているのかも気になりました。
「以前は東京の小さな家で、夜中まで制作をして、昼頃に起きてきて……という生活パターンでしたが、この家ではすっかり、子ども中心の過ごし方になっていますね。朝は7時ぐらいに起きて、朝ごはんを食べて、子どもたちを幼稚園や学校に見送って。そこからはもう、ずっとアトリエにいる感じです」(福田さん)
都心とは違い、家の周辺も静かな今の環境は、「気分転換にふらりとカフェに行く」ということもなく、「ひたすら、アトリエで制作している」という福田さん。「子どもと過ごす時間が息抜き…と言っては怒られるかもしれませんが(笑)、そんな感じなんですよ。なので徳島にいると動く時間が少なくて、体重も以前より増えました」
幸せなエピソードに、思わず微笑ましい気持ちになる編集部でした。
1階のリビングを出ると、「コの字型」の中庭が。「仕事の合間の休憩時間」を過ごすには、まさにぴったり。
ちなみに、この日福田さんがはいていたパンツは恵里さんの手作りによるもの。「『CHECK&STRIPE my favorite 私の好きな服』(主婦と生活社)というソーイングブックに載っている、テーパードタックパンツというパターンで作りました」(恵里さん)あえてメンズ仕様にはせず、Mサイズのものをそのまま着用しているとのこと。
そして恵里さんがはいているパンツは、CHECK&STRIPEともおつきあいの深いソーイングユニット「Quoi?Quoi?」さんのサルエルパンツ(パターンは『ほんのりスイート デイリーウェア (文化出版局)』に掲載されています)。
書籍の装画やCDジャケットなどで、福田利之さんの作品を知ったという人は多いことでしょう。
CHECK&STRIPE代表・labmiさんも、福田さんの代表作のひとつ、スピッツのCDアルバム「魔法のコトバ」のイラストでファンになったという一人。
リスペクトするクリエイターの方々とは、なぜか必ずご縁を引き寄せるというlabmiさんパワー(過去のroom storyにも、たくさんの驚きエピソードがあるので、ぜひお読みください)は、福田さんとの間にもおおいに発揮されていたことが判明。
「CHECK&STRIPE吉祥寺店の近くにあり、いつもお世話になっているgallery fève(ギャラリー フェブ)さんの、20周年の個展が開かれることになった時のことでした。オーナーのカーリンさんこと引田かおりさんが、その時にいらしていた福田さんを紹介してくださって。そこで、個展で販売するポーチを、ぜひ一緒に作りましょう! という流れになったんですよね」(labmiさん)
「そうです。僕の絵で商品を作ろう、とご提案いただいて。僕も妻もCHECK&STRIPEさんのファンだったので、お声がけいただけてとてもうれしかったんですよ」(福田さん)
写真は、その時の商品のポーチに使われた、福田さんの原画(*現在は販売されていません)。「カーリンさんがデザインをされて、福田さんの緻密な図案をプリントで表現し、CHECK&STRIPEの縫製スタッフがハンドメイドで縫い上げました」(labmiさん)「このポーチを求めて足を運んでくださった方もおられたんです。コラボしたかったCHECKさんとの夢が叶って、本当に光栄でした」(福田さん)
この時の出会いがきっかけでご縁がつながったという、福田さんとlabmiさん。
そして近々、福田さんとCHECK&STRIPEとのコラボレーションによるテキスタイルが発売されることになりました! Instagram(@check_stripe)やメールマガジンでお知らせします。
(写真上は、今回のコラボレーションテキスタイルに使われた一部が描かれている原画。写真下は、福田さんからご提供いただいた、テキスタイルの原画データです)
福田さんは、妻の恵里さんとも、「いつかCHECK&STRIPEさんの生地に、イラストを使ってもらえたらいいね」と、お話をされていたのだとか。また以前から、ご自身でもテキスタイルや布プロダクトの制作、ブランド発信などを続けてきた福田さん。「イラストレーションの延長線上にある、テキスタイルと暮らしのつながりは奥が深くて、とても興味を持っているジャンルなのです」とのこと。
次回後編sideBでは、福田さんのテキスタイルへの関心、イラストレーションへの想いについてのインタビューをお届けします。お楽しみに!
Column 暮らしの中の布使い
「もともと、子ども服を作りたかったんです」と恵里さん。「母がよく作ってくれていたのですが、自分でもやりたいなと思うようになったんです。CHECK&STRIPEさんの生地がかわいくて好きなので、お店で選んで、ソーイングブックを見ながら作っています」とのこと。月ちゃんのパンツ(写真上)は、『CHECK&STRIPEの子ども服 ソーイング・ナーサリー』(文化出版局)に掲載されているパターン「フローラルパンツ」。リビングの一角には、たくさんのソーイングブックが並んでいました(写真下)。
訪ねた方
福田利之さん
大阪芸術大学グラフィックデザイン科卒業後、株式会社SPOONにて佐藤邦雄に師事。独立後、エディトリアル、装画、広告、CDジャケット、絵本、雑貨制作の他、テキスタイルブランド「POSIPOSY(プスプス)」を手がける。現在、徳島と東京の2拠点にアトリエを構える。
https://to-fukuda.com/illustrations
撮影/大段まちこ 文/井尾淳子