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ROOM STORY

nounours booksが会いたい人を訪ねるページです。

家のこと。部屋のこと。

ともに暮らす家族、日々のあれこれや布使い、などなど。

「room story」side A、side Bとしてお届けします。

 

 

 

12-side A

おとなの「暮らし・リスタート」

 

「“先生に会うと、元気になる!”と、みなさんがおっしゃるんですよ」

というのは、CHECK&STRIPE代表・labmiさん。

まさに「パワースポットのよう」というその人は、CHECK&STRIPEのワークショップ講師としても活躍中の西山眞砂子さん。

「先生のワークショップ開催」となると、神戸でも東京でも、各地から駆けつけてくださる方が本当にたくさん。 

そんな「西山先生ファン」にとっても、今回はきっとおまちかね!

nounours books編集部は、2年前に完成したという西山先生の新居に伺うべく、冬の京都に訪れました。

 

 

 

 

「ようこそ~!」と、明るい笑顔で迎えてくださった西山先生と……

 

 

「にゃーん(2階もあるよ~)」と、案内してくれる、先生の愛猫きなこちゃん(御年21歳!)。

 

 

 

引っ越しをする以前は大阪・高槻市の自宅で、主婦業をこなしながら、パッチワークキルト教室「STELLA」を主宰。

夫・直秀さんの定年退職をきっかけに、京都市内の閑静な住宅街に、終の棲家を移したご夫婦。

聞くと、今回の引っ越し&移住計画について、西山先生の中ではもう随分前から、決意を固めていたことだったのだそう。

「結婚して40年になりました。前の家ではお教室をやりつつも、息子2人を育てながら、主婦として働く時間を最優先にと思って過ごしてきました。仕事柄遅くなりがちな夫なので、晩ごはんをつくって、お風呂をわかして、玄関にはスリッパを揃えて、万全で迎えよう!と思っていたんです。なので毎日午後3時くらいになると、おしりに火がついたように落ち着かなくなっていたんですよ(笑)」(西山先生)

もちろんそれは、誰に強要されたでもない、「おつかれさまでした」の気持ちを込めたいという、西山先生の思いやり。

けれど同時に、2人の息子が社会に出て、また直秀さんが定年退職したあかつきには、「わたしも、主婦業を定年させてね」と伝えてもいたそうです。

 

 

 

 

 

家のあちこちに飾られている、お気に入りのものたち。

「新しい家には、自分にとっての“一軍”だけを飾りたいと思って、お気に入りを買いだめしていました。キッチンにも作り付けの飾り棚を設けて、好きな道具だけを厳選して飾りたいと思って」(西山先生)

 

 

 

西山先生の信条は、「願いは必ず、言葉にする」。

「言葉にすることって、案外とても大事なことだなと思うんです。これまでもやりたいと願ったことはいつも、言葉にして出すようにしてきました」(西山先生)

たとえば、「いつかCHECKさんで、ワークショップをやりたい」ということ。「本を出したい。できれば3冊!」ということ。

そして「主婦業を定年したら、大好きな京都に移り住みたい!」ということ。

「振り返るとそれは、全部叶えられてきたんです」と西山先生は笑います。

どうなるかは、神のみぞ知る。

けれど、想いをいったん口にした途端、人は不思議と、それに向かって動き出せるもの。

実際はこんなふうな言葉で、直秀さんや家族を説得し続けてきたのだそう。

「京都なら、就職して上京した息子たちも帰省しやすい。文化的な環境も整っている。まだ動けるうちに、モノも減らして、コンパクトな暮らしにすれば、後々子どもたちにも迷惑をかけることもない。

そういうふうに、また新しい暮らしのスタートがきれると思わない?」

 

 

 

 

新しい家は、西山先生自身の夢ではあるけれど、それは同時に、家族にとっても「幸せな時間」の延長線にあるはず。

そんな夢の実現に向けて、直秀さんの定年が見えてきた頃から、物件探しはスタートしました。

「京都らしさを求めて、当初は、路地裏で、町家で、というイメージで探していたのですが予算内では難しくて。さらにコロナ禍の影響も重なって、物件探しは難航しました」(西山先生)

3年の月日をかけて探し続ける中で、ある時、不動産サイトで見つけたのが今のお家。

「小さな昭和の家で とくに古民家のような風情はないのですが、地下鉄・バス停・スーパー・病院、すべて徒歩圏内で行けるというロケーションが良かったんです。

環境もいいし、ピンとくるものがあったのですが、何より夫が唯一、首をタテに振った物件でもあったんですよ」

その理由については直秀さんいわく、

「夫婦ふたりなら、ちょうどいいだろうというコンパクトさと、家の前が全面道路で、真南で日当たりがいいのが気に入りました。京都は道が狭いところが多くて、建築基準法からも火災等になった際、“再建不可”の物件がとても多いんです。でもこの家は前の道が広いから再建も可能な物件で、将来子どもたちに相続した時にも売り出しやすいでしょう。僕は現実的に不動産価値で賛成したんですよ(笑)」

 

 

 

 

この日、編集部のために、西山先生がご用意してくださった、京都ならではの美味しいお昼ごはんとおやつ。

写真上は、万里小路・中村屋の助六寿司。写真下は、京都の老舗の嘯月の和菓子。両店とも、事前予約の上、当日引き取りに行くスタイルなのだそう。

「いらっしゃるお客様のおもてなしを考えながら準備をするという、“京都”的な暮らしが楽しいです」(西山先生)

 

 

 

そして、ティータイムのコーヒーは、直秀さんが丁寧に淹れてくださったもの。

「みなさんにたくさん、召し上がっていただきたいと思って!」という、西山先生。

お寿司も和菓子もコーヒーも本当に美味しくて、そのおもてなしにすっかり癒やされた編集部でした。

 

 

 

 

 

以前の家での暮らしと、新しい家での暮らし。実際生活が始まって、どんなふうに変わりましたか?と尋ねてみました。

「前の家は、家族4人暮らしだったこともあって、子ども部屋もひとりひと部屋ずつあり、広さとしては大きかったんですね。 

でも、その分何をするにも、一個一個が遠かったというか。でもこの家では、動線が全部手の届くところにあって、コンパクトで暮らしやすいです」(西山先生)

さらに語られたのは、「リスタート」という、とても素敵なキーワード。

「いわゆる、“暮らし直し”ですよね。夫婦ふたり60歳を越えて、また新しい家にきて、また新しい生活を重ねてゆく、ということ。

このリスタートが今はとても楽しくて、新鮮です。…でもね、そういう話をお父さん(直秀さん)の前では照れくさくて、あんまりしたくないんですよ(苦笑)」

というと、「いつも言うてるやないか」と、ご夫婦の息もぴったり。

美味しいものをたくさん頂きながら伺ったお話は、本当にやさしいやさしい、おとなのroom storyでした。

次回後編side Bでは、西山先生のリスタートライフを、新居の写真とともにお届けします。

 

 

Column 暮らしの中の布使い

 

 

 

「パッチワーク用に」と、端切れ布は空き箱に収納しているとのこと(写真上)。

「さらに、2センチ・3センチ・4センチと、サイズを分けています。それをまた縫い合わせる作業が好きです」(西山先生)写真下は、端切れを使って完成したクッションカバー。

 

 

訪ねた方

西山眞砂子

手芸デザイナー 京都府在住


CHECK&STRIPE、NHK文化センターなどでレギュラーレッスンを開催。京阪神を中心に広く活躍中。
著書に「西山眞砂子の暮らしによりそう布小物」(アップオン)、「旅するお針仕事」「暮らしまわりのお針仕事」(主婦の友社)がある。

 

撮影/大段まちこ 文/井尾淳子

 

 

 

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