close
CATEGORY

issue


ROOM STORY

nounours booksが会いたい人を訪ねるページです。

家のこと。部屋のこと。

ともに暮らす家族、日々のあれこれや布使い、などなど。

「room story」side A、side Bとしてお届けします。

 

 

 

14-side A 

人生において、大切なもの

 

かれこれ15年もの間、週末になると、「愛犬を連れての湖畔暮らし」を続けている郡司明子さん。

本宅は京都の町家。そして郡司さんは、自宅近くの中京区にある「Dog Cafe」のオーナーでもあります。

眩しいほどの、ある夏の日。

nounours books編集部は、郡司さんのオアシスという、琵琶湖畔のコテージ、通称「琵琶湖ハウス」を訪れました。

ここで過ごす週末時間、郡司さんはいつも、夫の昌彦さんと保護犬プロットハウンドの「ココちゃん」と一緒です。

 

 

 

コテージの眼前に広がる琵琶湖は、まるで海のような美しさ!

真っ青な空と湖水と、真っ白な雲と砂というコントラスト。そのまばゆさは、しばし、ほかのことを忘れてしまうような光景でした。聞くと、「関西のアルプス」とも言われる比良山系から流れる水が、この琵琶湖西岸にたどり着いているそうです。

「初めて訪れた時、まず水の美しさに惹かれました。そして偶然、この場所で土地を借りて住む人を募集している、ということをを知ったんです」(郡司さん)

“ここで犬を泳がせてあげたい!”

それが、その時の郡司さんのこころに湧き起こった、最初のわくわく。

「もともと、キャンプやアウトドアは得意な方ではなかったんです。でも、犬を泳がせたい!という気持ちが先に立って、トライしてみよう!と思いました」

この場所で週末を過ごすようになって、以前飼っていた2頭のラブラドールは、ここでたくさん泳ぐことができたそう。ところが、その後飼った保護犬2匹は、親の心子知らず…ならぬ、飼い主の心犬知らず(?)で、水が大の苦手だったことが判明。

「もうお空に行ってしまったビリーという保護犬も、今飼っているココも、全く水に近づかないんです!(笑) 砂浜をお散歩するだけなので、わたしたち夫婦の方がいつのまにか、SUP(ボードの上に立ちパドルを漕ぐアクティビティ)にハマってしまいました」(郡司さん)

 

 

郡司さんの現在の愛犬、保護犬のココちゃんは、推定年齢13歳の女の子。

5年前、「垂れ耳で黒っぽい子」を探し、保護犬団体を通じて見つかったのが出会いでした。

 

 

 

今回、編集部が訪問したコテージは、「10年契約が終わって、さらに更新し、また新たに建てたもの」。郡司さん夫婦にとっては、2軒めのコテージです。

「じつは最初、夫は週末湖畔暮らしにあまり乗り気ではなかったんです。それが実際に二拠点生活をしてみると、わたし以上にどんどんSUPやガーデニングにハマっていって。その様子を見ているのはとっても嬉しかったですね。

夫の仕事は、デパートのウィンドウなどの空間設計。フリーランスなので、普段は京都の自宅で働いています。週末をここで過ごして、月曜からまた自宅で忙しく仕事をするというライフスタイルが、いいリフレッシュにつながっているようです」(郡司さん)

契約終了後も更新し、また新たなコテージを建てたのは、「わたしも夫も、もう琵琶湖ハウスなしの暮らしは考えられない!」と思ったからだそう。

 

 

 

 

夫婦ふたりで設計したというコテージは、白を基調としていて、ダイニングキッチン&寝室(+バス・トイレ)という、シンプルながらもゆったりとしたひと部屋。

窓枠やドアはアンティークのものを移築して使っていたり、キッチンにも、かわいい雑貨がさりげなく飾られていたり。一歩足を踏み入れた瞬間、思わず「かわいい!」「外国みたい!」と声を上げてしまったほど、そこには素敵な空間が広がっていました。

「Dog Cafe」を始める以前の郡司さんは、フリーランスでディスプレイの仕事をしていたと伺って、その「多すぎず・少なすぎず」のインテリアセンスに納得。 

「すべて、ご自身で買い集めたものなんですか?」と聞くと、「そうなんです。とにかく買い物をするのが好き過ぎて」と笑う郡司さん。

「アメリカに旅した時に買ったものなど、京都の自宅にはお気に入りのものがたくさん眠っていて…。雑貨や本はもちろん、かわいいお菓子の缶とか、紙袋でさえも捨てられないんです」とのこと。

この琵琶湖ハウスには、“好きなものの中の、さらに好き”を厳選して、ディスプレイしているそう。

 

 

 

コテージ入り口のアンティークのドアについているのは、神戸で初めて「Dog Cafe 」をオープンした当時、飾っていたドアハンドル(写真/下)。

 

 

「気に入っているものが多いので、どれもなかなか手放せないのが悩み」という郡司さんですが、(「人生において大切なもの」については、もう随分前から絞られているのでは?)と思ったほどに明確。

その大切なものとは、「夫、犬、二拠点生活」。

「あれもしたい、これもしたい」と、多くを望まない生き方になっていったのは、ちょうどこの土地を借りた頃に起きた事故と、その予後で体調を崩してしまったことが大きいかも、という郡司さん。

「今はすっかり調子がいいので、普段は忘れてしまっているくらいなんですけれど」と、ほっとする前置きから、こんなお話をしてくださったのです。

 

 

 

「事故で怪我をして、打撲と捻挫をしたのですが、痛みがなかなか引かなくて。でもカフェの営業は、わたしがいなくても、スタッフが営業を続けられる状態だったんです。

なのでもし、わたしの人生に犬がいなかったら、痛みとその時の気持ちに負けてしまって、きっと精力的に動くことをやめていたように思います。なぜなら、当時はラブラドールを3匹飼っていたから。そのうちの一匹は、高齢で持病もありました。犬との暮らしを続けるためには、積極的に治療をしなければ!と決断できたんです」(郡司さん)

痛みがひどい時は、階段を上がることもできずに、犬たちと一緒に下の階で眠ることもあったのだそう。

その時も、今も。「犬たちからは、無償の愛を感じます。どんな時も、その愛を裏切らない。そんなところに惹かれるのだと思います」(郡司さん)

世の中に、まだ犬連れOKのカフェがなかった90年代、「そんなお店があればいいのに」というアイデアを実現した郡司さんは、まさに犬cafeの先駆け的存在。

「当時は若く勢いもあったので、犬に対しても、そして生き方に対しても、“こうでなければ!”という、どこか完璧主義なところがあったように思います」

でも今は、犬も、犬育ても、あるがままに。大切なものを、ただ大切に。

そんなふうに、リラックスした時間を愉しんでいる郡司さん。

人は、生きていく中で大切なものがはっきりするにつれ、頑張り過ぎていた力も抜けて、暮らし方にもだんだんと、余白が生まれてくるのかもしれません。

 

 

 

そして、「人生で大切なもの」の大きなひとつ、夫の昌彦さんは、「結婚して、犬を飼いたい!」という郡司さんの夢を叶えてくれた人でもあるそう! 

その気になるエピソードとは? 夏の光のもと、琵琶湖ハウスで過ごした思い出の時間は、次回後編のsideBへと続きます。

 

 

Column 暮らしの中の布使い

 

 

 

ハワイで撮影した写真がとても印象的でした」と、ソーイングブック『CHECK&STRIPE SEW HAPPY』(世界文化社)を読み、「C&S洗いざらしのハーフリネンダンガリーブロックチェック サックス」の布を、テーブルクロス用に購入したという郡司さん。「とても気に入っていて、大小2つのサイズで持っています。お客さんの人数に合わせて、その時々で使い分けています」(郡司さん)

 

 

訪ねた方

郡司明子さん

犬グッズも扱う、犬と人にやさしい「Dog Cafe」(京都・中京区)のオーナー。夫と保護犬一匹と、京都と琵琶湖の二拠点暮らし。

 www.dogcafe.co.jp

 

撮影/大段まちこ 文/井尾淳子

 

 

 

ROOM STORY

 

 

 

archive

もっと読む