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ROOM STORY

nounours booksが会いたい人を訪ねるページです。

家のこと。部屋のこと。

ともに暮らす家族、日々のあれこれや布使い、などなど。

「room story」side A、side Bとしてお届けします。

 

 

 

 

 

09-side B

わたしの「センス・オブ・ワンダー」

 

 

好きなものだけを置く。そう決めたアトリエで過ごす日々の中で、心身ともにパワーチャージしているのは、フラワースタイリストの平井かずみさんです。

アトリエで過ごす日は、決まった5つのルーティンがあるのだそうで、その1つが、午前中のうちに、目の前にある公園を散歩すること。

「今日はとってもお天気がよかったので、散歩に行かずにはいられなくなりました。園内の渓谷を渡って、光と水と、植物たちが成長していく様子を見て。本当に幸せな時間を過ごしてきました」(平井さん)

そんな羨ましいほどの環境で過ごす平井さんの毎日。side Bでは、草花から生まれたオリジナルプロダクツの写真とともにご紹介します。

 

 

 

 

 

続く2つめのルーティンは、公園の木が見える窓の大きな浴室で、頭を空っぽにして、ゆっくりお風呂に入ること。

3つめは、たくさん生けてある、すべてのお花の水を替えること。

「アトリエを持つ前はとにかく忙しすぎて、日々、花を生け替える時間すら持てずにいました。仕事柄、余ったお花を持ち返ってはくるものの……。クタクタに疲れている日は、バケツに入ったまま終わってしまうお花もいて。でも今は、部屋に飾る草花も、自生している草花と同じように、ありのままの姿でそこにいるんだな、と感じる心の余裕があるように思います」(平井さん)

 

新型コロナウイルスによる影響で、お花の教室が出来なくなるなど、世界的パンデミックは、平井さんの活動にも大きな変化を与えました。けれど、このアトリエで過ごす時間と空間は、平井さんに新しい活動のアイディアをたくさん、次々ともたらしてくれることになったのです。

 

 

 

写真は、高知のハーブ園、まるふく農園とのコラボレーションで販売した ハーブコーディアル(現在は販売終了)。「色や咲き方がいろいろなチューリップ12種と、そのしつらい方レッスンの動画付き、というセットでオンライン販売をしました」(平井さん)

 

 

 

〝ブンタール〟という、フィリピン原産のココヤシの枝から取り出した繊維で編まれた、美しい帽子の素材と出会った平井さん。「もう継承する編み手がいないというこの帽子を、後世に残す小さなお手伝いができれば」という願いから、帽子ブランド「chisaki」とのコラボレーションを実現。

 

 

 

 

 

 

 

直感に導かれるままに、昨年末には花のタブロイド判「seed of life」」を発行。スウェーデンの女性写真家の花の写真集にインスピレーションを得たというそれは、すべて、平井さん自身の写真と言葉で綴られています。

制作中のある時、平井さんは、アメリカの海洋生物学者・レイチェル・カーソンの名著『センス・オブ・ワンダー』の一節と出会います。それは、“いますこしの出費をおしまないで上等な虫めがねを買えば、新しい世界がひらけてきます”というもの。

「レイチェル・カーソンの言葉のように、わたしもiPhoneに虫めがね替わりのマクロレンズを取り付けて、自分で花を撮影しました。そうすることで、わたしのセンス・オブ・ワンダーとは何か、どんな視点で花を見ているのかをお伝えすることができるのでは、と思って」(平井さん)

 

 

 

 

写真は、「seed of life」の初回限定版で制作した「seed paper」。モノクロ版に登場する那須塩原の花農家・池田展康さんの畑で撒かれている フェンネルの種を、職人さんが漉き込んだもの。種の部分をちぎって地面に撒くと、ちゃんと芽が出たのだそう!

 

 

 

 

 

 

さて、お話は、平井さんの5つのルーティンに戻ります。

気になる、残り2つのルーティンは、次のようなことでした。

ルーティンの4つめは、大好きな天然石や鉱物を愛でること。

5つめは、お香を焚いたり、セージの葉を燃やしたり、空間の浄化をして、自分自身を癒やすこと。

「鉱物も、自然のものですよね。上に上に成長する植物が“生”だとすると、下に下に、地中に潜る鉱物は“死”を表しているのかも。でもどちらが良い悪いではなく、自然界にはその両方が必要で、それが陰陽のバランスでもあるんだなと、最近気づいたんです」(平井さん)

「お気に入りの浄化グッズに囲まれて、ちょっとした魔女時間を楽しんでいるんですよ」と笑う平井さん。でもそれらの全部は、きっと直感を研ぎ澄ますために必要な時間。

草花とつながる直感を養うための、平井さんにとっての「儀式」といえるのかもしれません。

 

 

 

 

 

「ただ、わくわくすること」。

このアトリエを持つ機会がなければ、自分の内側に芽生えた直感のまま、わくわくと活動することは、きっとなかったといいます。

「直感で生きていくために、ぜひみなさんも、暮らしの中で五感を研ぎ澄ませる時間を持ってみてください。そうすることできっと、みなさんの“センス・オブ・ワンダー”も、ひょっこり顔を出してくれるはずです」(平井さん)

 

 

Column 暮らしの中の布使い

韓国に昔から伝わるポジャギ、フランスや日本のものなど、生地にニュアンスのある古布がお気に入りという平井さん。

「来客時などは、友人が古い藍染の生地で作ったコースターを愛用しています。また、目隠しとして、ただカゴの上にかけておくだけも、雰囲気が出るのがいいですね」(平井さん)

 

 

 

 

訪ねた方

平井かずみ

草花がもっと身近に感じられるような「日常花」の提案をしている。

東京を拠点に花の教室「木曜会」や、全国でworkshopを開催。

また、雑誌やCMでのスタイリングのほか、

「すぐそばにある自然の営みに気づくことで、私たちの感性の森を育む」をテーマに活動する「seed」の第1弾として、

写真・文を自ら手がけた花のタブロイド『seed of life』を発行。

https://www.hiraikazumi.com

*本文で紹介している花のタブロイド判「seed of life」は、プロフィール内リンクより購入可能です。

撮影/大段まちこ 文/井尾淳子

 

 

 

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