『CHECK&STRIPE my favorite 私の好きな服』
発売記念座談会 前編
CHECK&STRIPE16冊目となるソーイング本『CHECK&STRIPE my favorite 私の好きな服』(主婦と生活社刊)の発売日のひと月ほど前、この本にご自分の好きな服のアイデアを寄せてくださった荒井博子さん(ダンスコ)、後藤由紀子さん(hal)、葉田いづみさん(グラフィックデザイナー)、引田かおりさん(ギャラリーフェブ)、そして本のスタイリングを手掛けた黒澤充さん(スタイリスト)にお集まりいただきました(会場:ギャラリーフェブ)。
ー この本は10名のみなさん(座談会参加のみなさんほか、石村由起子さん〘くるみの木〙、大澤弘美さん〘LULU〙、河村奈穂さん〘サハンジプラス〙、高橋みどりさん〘スタイリスト、タミゼテーブル〙、なかしましほさん〘料理家、フードムード〙、吉田真弓さん〘サビタ〙)にご自分の頭のなかにある着たい服のアイデアを伺い、CHECK&STRIPEと一緒に作り上げたアイテムを紹介するというソーイング本になっています。labmiさん、本を作るきっかけはどんなものだったのでしょう?
labmi(CHECK&STRIPE代表) たしか3年か4年くらい前に、カーリン(引田さんの愛称)さんと高橋みどりさんと話したことが最初です。自分たちがずっと好きな形の服や、ここがこうだったらいいのになと思う服が作れたらいいのにと。そんな洋服を作る本ができたらいいなという話ですごく盛り上がったんです。
引田さん そうそう。ほんとにもうクローゼットからお気に入りを引っ張り出してきて、ここがこう、とか熱く語っちゃったんですけどね。
labmi 色んな話に花が咲いて。10年前にお友達が作ってくれた服だったり、頭のなかにあるずっと思い描いていた理想の服だったり。いろんな方の好きな服を提案していただくソーイングブック、ようやくそれが形となりました。
(参加者のみなさんからパチパチパチと拍手)
ー みなさんの頭の中にあるデザインを形にするわけですから、この本はできあがるまでにちょっと時間がかかった本でもあります。お仕立てをして、それを本という形に落とし込むというかんじですよね。お仕立てってすごく理想的な洋服の作り方です。
引田さん 私の年代だと、すごく小さい頃、ご近所に小さく「お仕立てします」という看板を下げているようなお宅が何軒かあって、そこへ父が着なくなったコートを持っていって何かに変えてもらうとか、そういうことが当たり前だったんですね。だから、チェックさんがお仕立て(THE HANDWORKS)を始めたときはすごく嬉しくて。普通のアパレルの服だと、お気に入りがあっても二度と同じものが手に入らなかったり残念なことが多かったので、そういう意味でもすごく嬉しかった。さらに今回は、いろんな自分の思いを込めて形にしていただいて、本当に楽しい企画でした。
ー 引田さんが今着てらっしゃるのは大きなチェック柄の生地で仕立てた開衿ワンピースです。本に掲載されたライトグレーのリバティプリントとは全然違うイメージですね。
引田さん そうなんです。元々はちょっとノスタルジックな、昭和のお母さんが買い物かごを提げて夕飯を買いに行くみたいな。ちょっと向田邦子のドラマに出てくる女性が着ている服みたいなイメージの服があったらいいなと、いつも思っていて。とくに、この小さな開衿。絶対小さな衿がいいと思ってたんです。季節も移り変わるし、今回は、この生地(C&S洗いざらしのハーフリネンダンガリーブロックチェック)で作りたいと思って。生地感も気持ちいいし、初夏の感じになって嬉しいです。
荒井さん すてき! 軽いコートみたいにも着られますね。
引田さん 今の暮らしに沿うものを考えると、ノスタルジックなだけじゃなくて、前は全部ボタンにしてコート風に着られたりとか、きちんと留めればワンピースになったりとか。いろいろやりとりさせていただいて。
ー 葉田さんはいかがですか? 今回、葉田さんはこの本のブックデザインもされていますが、まずはご自分が作りたいと思ったアイテムについて教えてください。
葉田さん ふだんはパンツスタイルが多いんですが、本で提案したのはケープブラウスとロング丈のノースリーブワンピース。イメージ通りの仕上がりで嬉しかったです。
ー こだわったところは?
葉田さん ワンピースの方は、パイピングの、ちょっと幅広のベルトをつけていただいて。パイピング、好きなんです。そのベルトの幅などを結構細かくやり取りして、とても楽しかったです。
ー 書籍に掲載されているワンピースは緑のギンガムチェックでカジュアル。でも新たに作られた*のは黒がメインの生地でパイピングは綿麻の生地のベージュで。すごくシックでまったく違う印象でした。
葉田さん そうですね、同じ型なのにガラッと違うのですごいなと思いました。着てみると、意外と身幅もしっかりあるので動きやすい。すごくよく考えられたパターンだと思います。
ー 荒井さんは最初からワンピースがいいとおっしゃってたんでしたっけ。
荒井さん そうですね。1枚でさらっと着るのがいいかなと。
ー 普段から、ワンピースを1枚で着るようなのが荒井さんのスタイル?
荒井さん いや、実はそれはそんなに着ないんですけれども、これを着てどこかへお出かけしたいなとか思いながら買いものするのが好きで。
ー じゃあちょっと今回は色んなイメージが膨らんだかんじでしょうか。
荒井さん そうですね。普段着というよりは、特別な日をイメージしました。お仕立てっていうと、小さな頃に、絵を描いてセーターを作っていただいた楽しい記憶はあるんですが、 それ以降ずっとお仕立てをしたことはなかったと思うんです。今回は、洋服のお仕立てを初体験させていただいたかんじで。
ー 荒井さんのワンピースは表紙にもなりましたが、今回新たに仕立てた黒*もネイビー*もすてきでしたね。
荒井さん 本当にすてきに作っていただきました。いつ着ようか楽しみです。
ー 後藤さんは最初からリクエストがはっきりされていた印象です。Vネックのワンピースで、すとんとしたかんじ。
後藤さん そうですね、細かいディテールまですごくこだわって、お願いしちゃったんですけれども。ニットやプルオーバーなど、Vネックが大好きでいろんなアイテムを持っていますが、今回はワンピースで。鎖骨がきれいに見えて、さりげない女性らしさがでるパターン。シルエットがきれいだから活躍してくれそうです。私は身長も低いから、市販のものだと、だいたいいつもお直しをしなければいけなかったりするんです。ほかにも、あと、もうちょっとここをこうだったらいいのにな、みたいなことがいっぱいあって。今回は、そういうところが全部活かせたので、すごく楽しかったですね。
labmi 以前も別の企画でお誂えしてくださったりしてるんですよね。
後藤さん チェックさんには、何回かオーダーさせていただいてるんですけど、とてもいいシステムだなと思っていて。誰もが自分で洋裁をできる人ばかりではないから、夢を託せるというか、ほんとにありがとうと思います。
ー 後藤さんの洋服のパターンがほんとにすごくわかりやすかったのですが、生地でシルエットが全然違って見えるんですね。
後藤さん はい、厚さがちがっていて。全く別物ですよね。
引田さん 衿ぐりが少し立ち上がっててかわいいです。
後藤さん 後ろがぺろっと開いてしまうと、落ち着かないので。ちょっと立ち上げて、あんまり後ろが見えないようにしていただきました。
(みなさん、ふむふむとうなずく)
ー チェックさんとみなさんとはけっこう細かいやりとりをされたのでしょうか?
labmi カーリンさんの開衿ワンピースとかは途中でガラッと変えましたよね。
引田さん そうでしたね。娘の意見も取り入れたりして。
ー どういうアドバイスが?
引田さん 丈をね、中途半端にするなって言われました。「その丈感で 老けて見えるか、ちょっとおしゃれに見えるか全然違うから、思いっきり丈を長くした方がいいよ」とか。
みなさん なるほど~!
引田さん labmiさんからもアドバイスいただいて。「やっぱり袖丈は長い方がいいんじゃない」って。そういうことも取り入れて。ふふふ、なかなかノースリーブ着るの難しいし。
荒井さん ふふふ、すみません! 早々に出しちゃって。
(この日の私服がノースリーブにパンツスタイルだったため)
みなさん 羨ましい~。
荒井さん 気にしてないだけですって!
後編に続く。
*印のついた洋服は後日公開いたします。
○座談会に参加していただいたみなさん
荒井博子さん アメリカ生まれのコンフォートシューズ「ダンスコ」を日本に紹介、ブランドディレクターを務める。https://www.dansko.jp/
後藤由紀子さん 沼津市の人気雑貨店「hal」店主。近著に『毎日のこと、こう考えればだいじょうぶ。』(PHP研究所)https://www.instagram.com/halnumazu/?hl=ja
葉田いづみさん グラフィックデザイナー。本書のデザインも担当。http://izumihada.com/
引田かおりさん 吉祥寺「ギャラリーフェブ」とパン屋「ダンディゾン」を営む。『青空 そよかぜ 深呼吸』(大和書房、6月11日発売)など著書多数。https://hikita-feve.com/
黒澤充さん スタイリスト。雑誌「アンド プレミアム」などでキュートな世界観を展開。
撮影・大段まちこ 文・太田祐子(タブレ)