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チクチクてくてく神戸

チクチクてくてく神戸

神戸・芦屋・自由が丘・吉祥寺・鎌倉。

CHECK&STRIPEのお店がある街は、その周辺にも魅力的なスポットが本当にたくさん!

足を運んでくださったお客さまにおすすめしたい、スタッフ厳選、ご近所の名店をご紹介します。

ソーイングのお買い物の行き帰りもぜひ、寄り道を楽しんでくださいね。

 

 

記憶に残る味  ~欧風料理もん

 

 

 

神戸三宮・CHECK&STRIPE神戸店近くにある老舗の洋食レストラン「欧風料理もん」は、創業昭和11年(!)。90年近くの歴史をもつこのお店は、CHECK&STRIPE代表のlabmiさんも長く通う、大切なお店です。

「家族と、また仕事のお客さまとも、よく行きます。どのメニューもおいしくて、歴史があるだけに安心の信頼感があります。人気店ですが1階から4階まであり、食べたいメニューや用途によって、行く度に楽しむことができるのです。かつての開港をきっかけに、西洋文化が多く入ってきた、神戸ならではの洋食屋さんではないでしょうか」(labmiさん)

 

 

神戸らしい、モダンな雰囲気が漂うお店の入口。写真の左側にある「美富貞喜」の文字は、「ビフテキ」と読むそう!

 

 

もんは、神戸の文化人も愛したお店。中に入ると、建築家の安藤忠雄さんの奥さま、そして作家の田辺聖子さんからの貴重なお手紙が飾られています。

 

 

 

 

 

店内には、先代のコレクションという貴重な骨董品がたくさん。お店の歴史や店内、そしておいしいメニューの数々など、おすすめポイントは数々あれど……なのですが、「中でもこちらのマダムについて、またマダムから伺った阪神淡路大震災後のストーリーは、ぜひ知っていただきたいです」というlabmiさん。

マダムとは、創業者から3代目に当たる日笠尚子さんのこと。常連のお客さまにも、観光でいらしたお客さまにも、絶妙のタイミングと距離感で、ウィットに富んだお話、お声かけをされる「もん」いちばんの名物的存在ではないでしょうか。「マダムとは、よくお話をさせていただきました。いつも髪をきれいにセットされていて、真っ白いエプロンをつけておられる素敵なマダムです」というlabmiさんから紹介されたのは、こんなストーリーです。

「震災直後、水やガスがなかなか復旧しない中、マダムは毎日お店に来て、再建のために奔走されたそうです。先代のつくったお店は全壊してしまったのですが、柱などの建材を大事に、濡れないようにと、ビニールシートに保管されたのだとか。そしてその建材を使って、震災前と同じ場所で同じように、今のお店を再建されたそうです。お店の完成時には、先代のお母さま(マダムのお姑さん)をご招待された、とも。“いらんことをして……”と言いつつも、お母さまは嬉し涙を流された、と聞きました」(labmiさん)

 

 

 

 

入口付近でもらえるマッチ(写真上)とメニュー(写真下)のかわいいグラフィックデザインも、ファンが多し。神戸に生まれ、独学で版画を学んだという明治生まれの作家、川西英の作品によるものです。 

 

 

 

「震災後、マダムは最近まで、一日も店を休まずだったと伺っています。最近はお店で、あまりお見かけできていないのですが……」と心配するlabmiさんの声をお店に伝えたところ、対応してくださったのは、なんとマダムのお孫さん。4代目の日笠公太さんにお話を聞くことができたのです(公太さん、公太さんのお母さまとで4代目になるとのこと)。

「おばあちゃんは元気です。ただ80代で足腰がふらつくこともあり、古くからの常連のお客さまがいらした時など、店に出る日は限られているんです」とのこと。

ほっと安心しつつ公太さんには、「後を継ぐことは、以前から決めておられたのですか?」と、尋ねてみました。

「ゆくゆくは、とは考えていたのですが、決心したのは大学卒業前後です。その前からもホールに入って手伝いをしていて、他の店で修行を積むかどうか迷っていたのです。でもやっぱり、この店があるおかげで僕は大学まで出していただけましたし、恩返しをしたいという気持ちが決め手になりました。この店の力になればと思って、創業時からの料理長から学び、本格的に修行を始めたのです」(公太さん)

それはさぞかし、マダムもお喜びだったことでしょう!

 

 

labmiさんの定番メニューのひとつ「マカロニグラタン」は、エビ、チキン、ビーフの3種類があり、各1,480円(税込)。

 

 

 

 

人気メニューの「名物とんかつ」1,820円(税込)。ごはんとお味噌汁がついた「名物とんかつ定食」は1,980円税込。

「ひと口サイズのとんかつは、びっくりするほどやわらかくて、こちらもおすすめです!」(labmiさん)

「とんかつは、もともとやわらかい豚のヘレ肉を使っているのですが、ひと口サイズに小さく切ること、また切ったあとも硬い部分が残らないように筋切りをしています」と、公太さんからは、とんかつのやわらかさの秘密も教えていただきました。

 

 

 

 

「歴史あるこのお店を、どのように守っていきたいですか?」と尋ねると、公太さんからは、こんな頼もしい答えをお聞きすることができました。

「基礎をしっかり、ということですね。先代が“これがおいしい”と決めた味を守って、創業当時からずっと同じメニューを続けている店なので、その味を、決して外さないことです。あとは店内をしっかり掃除して、つねにピカピカにするとか、お客さまにご提供する前にも、味見は絶対に欠かさないとか。そういった基礎ができてからの工夫、と、今は心しています」

そして、「おいしさにも種類がありますけれども、“記憶に残る味”が、僕はやっぱり、いちばんおいしいのではと思います。ですから常連のお客さまにも、新しいお客さまにも、その味を、ずっとお届けしていきたいと思います」とも。

実際にお店におじゃました時間は短いながら、とても長いドラマを、凝縮して見せていただいたかのような取材のひと時でした。

神戸に訪れた際にはぜひ、受け継がれる店の「記憶に残る味」を、「もん」で味わってみてはいかがでしょうか。

 

 

欧風料理もん

兵庫県神戸市中央区北長狭通2‐12‐12

営業時間 11:00~20:45(LO)

定休日: 第2・3月曜日 *祝日の場合は営業

 

撮影/大段まちこ 取材・文/井尾淳子

 

 

 

チクチクてくてく

 

 

 

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