02 たいせつな食堂
「このお店の近くに暮らしていて、本当によかった!」
大好きなお店がご近所にあるというしあわせに、ちょっと大げさ?かもしれないけれど、
こころが震えるほど、嬉しくなってしまうことはありませんか?
ひとりでも行きたい。
大切な人とも行きたい。
CHECK&STRIPEの本拠地・神戸にも、そんな大切なお店がたくさん。
編集部自慢のFavorite Shopについて、ご紹介します。
3 かもめ食堂
かもめ食堂は、神戸・六甲にある定食とお惣菜のお店。labmiことCHECK&STRIPE 代表・在田佳代子さんのヘビロテメニューは、こちらのお惣菜の焼き豚なのだそう。
「人気商品なので売り切れの日もあるのですが、めげずに〝今日は焼き豚、ありますか~?〟とチャレンジしています(笑)。焼き豚を買って帰り、お皿に盛る。それにキャベツの千切り、お味噌汁…というメニューは、わが家の定番。モリモリ食べて、日々の活力にしています」(labmiさん)
焼き豚の人気の秘密は、3日間も美味しいタレに漬け込んで作られているから。
「お店に出せるのが、どうしても週2回くらいになってしまうんです」と、少し申し訳なさそうに話してくれたのは、店主の船橋律子さんです。
「今日はありますか~?」の焼き豚(写真上)。100g /550円(税込)
コロナ禍での取材となったため、この日の営業はテイクアウトのみ。ショーケースの中には、「ひじきの煮物」や「ポテトコロッケ」など、みんなが大好きなお惣菜が並んでいました。
「幅広い年齢層のお客さんに、便利に使ってもらえるようなお店でありたい」と、船橋さんは言います。だから食材も調味料も、めずらしいもの、変わったものは使わずに、手に入りやすい、おなじみのものだけを使うと決めているそう。
そんな「おうちごはん」にこだわる理由は、船橋さんの「味覚のモト」を作った、お母さんの作るごはんにありました。
「子どもの頃から母のお手伝いをするうちに、料理が大好きになりました」(船橋さん)
今知ると驚くエピソードなのですが、かもめ食堂を始める以前の船橋さんは、「独学の経験しかない自分に、お店を開くなんてできるはずない」と思い込んでいたそう。
「なので社会人になってからも、商社に勤めたり、介護の仕事をしたり、長らく料理とはべつの仕事に携わっていたんです」(船橋さん)
でも、転機はちゃんとやってきました。それは、店名と同じタイトルの、あの映画。北欧で小さな食堂を始める日本人女性が主人公の作品を観た船橋さんは、「料理のプロではなくても、お店をやることができるかもしれない」と、人生の舵を切ることにしたのでした。
野菜たっぷり、やさしい味わいの日替わり弁当(700円 /税込)。
ご近所にあれば、毎日通いたい!
2008年に神戸のオフィス街にオープンしたかもめ食堂は、「もう少し、住宅街の食堂でありたいな」と、2015年にここ、六甲の店に移転。
小学校や公園にほど近い環境で、地元の人々のおなかを満たしていた船橋さんです。
けれどこのコロナ禍を経て、またあらたな決断に至りました。
それは、料理の師であるお母さん、ともにお店を営む相方の窪田靖子さんと、兵庫県西脇市へのお引っ越し&移転。
「いずれは自然豊かな場所で、畑をしながらお店をしたいと思っていました。実際に次のお店の物件を見に行った時、自分たちがこの場所でお店をやっているイメージがスッと浮かんできて。〝あっ、ここだ〟と、ピンときたんです」(船橋さん)
そして、かもめ食堂loverのlabmiさんからも、こんなコメントが寄せられました。
「移転されると聞いて、本当に驚きました。寂しさでいっぱいです。西脇市は私が生まれた町でもあるのですが、それでも寂しくて。きっと六甲のお客様はみんな、私と同じ気持ちではないでしょうか。でも、お二人が決められたこと。今はこころから応援しようと思っていますし、〝これからのかもめ食堂、どんなふうになるのかな?〟と、少しワクワクもしています」
直感に導かれて、また、次の場所へ。
「世の中のさまざまな情勢に左右されることなく、少しでも長く続けられるかたちで、ずっと飲食業で働いていたい」という船橋さん。きっとあの映画は、「あなたのたいせつな仕事は、ごはんを作ることだよ」と、教えてくれていたのかもしれません。
これまでのお客さんも、これからのお客さんも。
温かく、なじみ深い味で迎えてくれる日は、きっともうすぐです。
かもめ食堂
神戸市灘区高徳町3丁目2-21
078-779ー7477
営業時間
お食事予約制(11:30~12:45、13:00~14:15)
お持ち帰り 11:00~18:00 なくなり次第終了
“上記住所での営業は2021年6月29日で終了。
移転先の新店舗での営業再開は、公式ページにてお知らせされます。
写真 大段まちこ 取材・文 井尾淳子