04 宝石のようなフルーツ
「このお店の近くに暮らしていて、本当によかった!」
大好きなお店がご近所にあるというしあわせに、ちょっと大げさ?かもしれないけれど、
こころが震えるほど、嬉しくなってしまうことはありませんか?
ひとりでも行きたい。
大切な人とも行きたい。
CHECK&STRIPEの本拠地・神戸にも、そんな大切なお店がたくさん。
編集部自慢のFavorite Shopについて、ご紹介します。
5 ベニマン(Beniman)
今回ご紹介するのは、「フルーツサロン・ベニマン 神戸元町本店」。
大正元年(1912年)、果物商としてスタートしたという、神戸の老舗フルーツサロンです。お店は明治・大正期に活躍した建築家・河合浩蔵氏が手掛けたことでも知られる「毎日新聞神戸ビル」の1階にあって、とってもクラシカル! その雰囲気と、「フルーツサロン」というすてきなネーミングも相まって、わくわくしながらお店に入りました。
真っ白なテーブルクロスと、真っ白なカーテンと。
ぴかぴかに磨かれた床に、「ほ~」とため息をついて眺めていると、「床掃除に掃除機は使わないんですよ。毎朝、スタッフみんなでぞうきんがけをしています」と、ご夫婦で3代目オーナーを務めた樋口節子さんがお話をしてくださいました。(現在のオーナーは4代目。節子さんの長女・樋口裕賀子さんです)
ベニマンは「紅萬」と書くのですが、「紅」は新鮮なフルーツの色、「萬」は、専門店という意味を指しているのだそう。CHECK&STRIPE代表のlabmiさん(在田佳代子さん)も、そんなフルーツのプロフェッショナル、ここベニマンに敬意を表しているおひとりです。
「初めてベニマンの存在を知ったのは、12年前くらいです。長い長いお店の歴史を思うと、わたしはまだまだひよっこです。初めて伺った時、清潔な店内や豊富なフルーツのメニューに感動して、以来、通い詰めています。93歳になる夫の父もベニマンの大ファン。神戸に来ると必ず、こちらのフルーツサンドをうれしそうにいただいています」(labmiさん)
labmiさんのイチオシは、季節ごとに変わるフルーツパフェ。
「ベニマンに苺が出始めたら、春を。また、桃のパフェは夏の始まり。7月1週目ごろに出るレイニアチェリーの時は、さくらんぼの印を手帳に書いて、買い逃さないように注意しています。晩夏になるとマスカット、秋には栗。ベニマンで四季を知る……と、いいましょうか。わたしも季節ごとにさまざまな提案をしていく仕事をしているので、勝手に“季節の並走ランナー”のような気がして、パフェを食べるたびに季節の移ろいを楽しんでいます」(labmiさん)
写真の「旬果のフルーツパフェ」(1320円 税込)は、コーヒーまたは紅茶つき。その時期にいちばんおいしい旬のフルーツをふんだんに使ったパフェです。
お味見させていただくと、底に入っているアールグレイティーの部分にたどり着くまで、グラスの中は季節のフルーツがぎっしり!&よけいなかさ増しはなし!
(「フルーツパフェの正解はこれだ!」と、こころの中で歓声を上げたわたしでした)
labmiさんがとくに好きなのは、「まるごとメロンパフェ」とのこと。
メロンを半分にカットした中に、たくさんのフルーツとアイスクリームが入っているのだそう。旬のフルーツがテーマのため、撮影時にはメロンパフェはなく……。写真がないのが残念!
「そして、あまり知られていないかもしれませんが、お持たせに大活躍なのが、“フルーツアレンジ”というメニューです。フルーツがフラワーアレンジのように盛られていて、家族の集まりの時などは、とっても盛り上がります。そのほか、フルーツが宝石箱のようにキラキラと詰まっている“フルーツゼリー”もおすすめで、これも家族の誕生会の定番。ともに、要予約になります!」(labmiさん)
写真は、宮崎県産の完熟マンゴー(*その年による時価のため、詳細はお店にご確認ください)。
取材に訪れたのは初夏。この日、「旬のメニュー」として並んでいたのは、写真のマンゴーをはじめ、さくらんぼやぶどう、アンデスメロン、スイカなどでした。迷いに迷ってメニューを決める、お客さんたちの顔が目に浮かぶよう。
ベニマンの「おいしいフルーツ」へのこだわりは、大正時代の果物商がそのルーツ。その当時から、街の人々にとっては見慣れない、外国のフルーツをたくさん扱っていたのだそうです。
「初めて見るフルーツは、どうやって食べたらいいのか、わからないですよね。そこで先代がとったのが、お客さんの目の前で、実際にフルーツを切って、その場で食べてもらう、というスタイルです。それが、フルーツパーラーのはじまりなんですよ」(節子さん)
おいしいフルーツをいただいて、おなかがしあわせになったあとは、店内で販売されているドライフルーツ、無添加で作られた季節ごとのジャムも気になりました。
(オンラインショップは、プロフィールにある公式サイトからご覧ください)
「ここのフルーツがいちばん!」
神戸の人々が、そう太鼓判を押す理由は、厳しい目と味覚による仕入れと、全国各地の生産者さんとの間で培った信頼関係にあります。
「仕入先は、神戸や大阪の中央卸売市場のほかに、旬のものは産地直送にこだわっています」と、節子さん。たとえばメロンは、硬すぎてもいけないし、やわらかすぎてもいけない。ちょうど食べごろ、ベストシーズンのものをお客さまに提供することをたいせつにしている、といいます。
「おいしいフルーツをつくっている生産農家さんのもとには、定期的に足を運んでいます。実際に自分たちで食べてみて、納得したものは、たとえ少量でも仕入れると決めていて。小ロットなので、高額になるフルーツもありますが、だからこその理由や背景について、自信をもってお客様に説明することができます」
そう語る節子さんのまなざしはきりりとしていて、四世代にわたり生産地を巡ってきた、長い時間を物語っているかのようでした。
てまひまかけて、ていねいに育てられたフルーツ。「せっかくつくったものですから、ベニマンさんで売っていただきたい」と、生産者さんから言われることも少なくないのだそう。
節子さんの朝は、そんな宝石のようなフルーツの数々に、ナイフを入れることから始まります。
「その日にお店に出すフルーツは、毎朝切って、必ず試食をします。切って、食べてみて、出す。これが創業時から続く、うちの店の強みでもあるので」(節子さん)
「長くやっていますけれど、フルーツを切る、この瞬間だけはイヤになったことがないんですよね」という節子さんのひと言。わたしにはその瞬間、お店中のフルーツたちが、また一層、輝きを増したように見えたのでした。
紅萬(Beniman)神戸元町店
神戸市中央区栄町通4-3-5 毎日新聞神戸ビル1F
078-360ー3943
営業時間
*まん延防止等重点措置、緊急自体宣言に伴う期間中は、以下の通り。
フルーツパーラー 11:00~18:00(LO 17:30)
ランチ 11:30~14:00時(売り切れ次第)
物販 11:00~18:00
定休日
水曜(祝祭日の場合営業、翌日代休)
写真 大段まちこ 取材・文 井尾淳子
CHECK&STRIPEの「冬の贈り物」のこちらのページでベニマンのジャム、巾着袋を販売しています。
ぜひご覧ください。